NOCEの家具バイヤーズブログ 2012年7月20日 おけら Part 1

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2012年7月20日 おけら Part 1

今週、梅雨明け後の猛暑日もあり「いよいよ夏本番か」と思っていましたが、今日はなんだか涼しい風がふいて凌ぎやすくなっています。
これは、北にあるオホーツク海高気圧が強いためですが、このままの状態が続くと涼しい夏になりそうです。
そう言えば、今年もまだセミの声は聞こえません。
セミの減少は続いているのでしょうか。
今週末、NOCEのある地域の天候ですが、土曜日は福岡、新潟、関東は雨でほかの地域は晴れや曇り、日曜日は全地域で晴れまたは曇りとなるそうです。
気温が去年より低めなのでお出掛けには良さそうです。
そしてその際には是非NOCEにお立ち寄りいただければと、お客様の御来店を全国スタッフ一同心よりお待ち申し上げております。

今週の新商品のご紹介は、先週に引続きチェコのTON社からのチェアです。
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IDEALと名付けられたチェアは1998年のリリースですが、オーソドックスなカフェチェアのデザインは年月に関係なく飽きがきません。
最近、TON社も若手デザイナーを積極的に抜擢しているため、「凝った作り」の物が多くそれに付随して価格も高くなっています。(とは言え、同等の他チェアと比較すれば安い)
そこでもう少しリーズナブルなものとしてシンプルでカフェチェアの優等生とも言えるチェアを今回セレクトさせていただきました。
デザインはストレートの前脚と背もたれのフレームと一体化させて少し角度を付けた後脚にプライウッドの背もたれが付いたもので正に「The Chair」と言った感じです。
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ただこのシンプルなデザインをここまで綺麗に見せる事ができるのはさすがにチェアを作り続けてきたTONの伝統と言えます。
インテリアでは、カフェ系は勿論、シンプルやナチュラル系とクセのない分様々なシーンで活躍できそうです。
素材はブナ材でウォールナット色にステインされています。
さて、このチェアの売りはデザインや雰囲気だけではありません。
なんと言っても座り易さにあります。
幅の広い背もたれ部分のカーブと座面のバランスが絶妙で体をしっかりと支え、安心感さえ与えてくれます。
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又、座面の面積が広く、真中のくぼみが体にフィットして抜群の座り心地が得られます。
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価格は10,800円(税込み)とこのパフォーマンスから考えれば安いと言えます。
現実にこのクラスを中国で作ってもこの価格におさまらないだけでなく、この雰囲気はまず出せません。
今回、座り心地に関して言及させていただきましたので、是非NOCE各店舗にて実物をお確かめいただければと思います。

曲木チェア488
¥10,800
幅44×奥行47.5×高さ83(46)㎝
Made in Czech Republic


先週、日が暮れる梅雨明け前の下北沢を歩いていると、数少ない空き地の地底から「ジーーー」という虫の鳴き声が橙の夕焼け空の下、響いていました。
この時期、いつもどこかで聞いていたような声ですが、祖母から「あれはミミズが鳴いているの」と教えられ、祖母の言う事は絶対なので近年までミミズだと信じていました。
ミミズが鳴く事は生物学的見地からミミズには「どう考えても発音器官がある」とは考えられないため、「おけらではないか」と思っていたのですが、祖母の教えにそむくわけにはいかず、「ミミズとおけらが共鳴している」と本当にそう思っていました。
友人にも「あれはミミズだ」と自信を持って言っていたので、友人は必ず他人にも「あれはミミズだ」と言っていた筈です。
これは間違いです。
この地面から夕暮れ時に聞こえる「ジーーー」はおけらです。
ミミズは鳴きません。
それでは、街の真中で暮らすおけらとは一体どんな生物なのでしょうか。
土の中で生きる昆虫です。
土の中で生活しているため普段あまり見る事はありません。
実物を見ると、前脚がカマのようになっていますが、これはこの前脚で地中に穴を掘って道を作ったり、巣を作ったりする役割をするためです。
外見は細長いコオロギと言った感じですが、これはキリギリスを祖先として親戚がコオロギだからです。
イギリスでおけらを「Mole Cricket」「モグラコオロギ」とも呼ばれている由縁です。
小さい時に、羽根が発達していないためコオロギのように跳ねるからでしょうか。
さて、おけらは昆虫としては非常に多才で色々な事ができます。
まず、穴を掘って巣を作ることが出来ます。
そして、コオロギのように羽根を擦り合わせて鳴くことが出来ます。
しかも、自らの巣穴をスピーカーのように共鳴させて大きな音を出す事を知っています。
羽根が付いているので上手くはありませんが街灯くらいの高さならば楽に飛べます。
泳げます。他の地上に住む昆虫と較べればオリンピック並みです。
穴に巣を作って卵を守り、生まれると子育てをしながら共同生活をします。
巣を守ると言う防衛本能があります。
コオロギのようにジャンプする事が出来ます。
結構、足は速い方です。
おけらは昆虫だけではなく生物としてもかなり多才でこれらの能力以上の生物はあまり見た事がありません。
僕も泳いだり、走ったりはできますが、手で大きな穴は掘れません。
上司にイヤミを言われて「羽根があったら自由に空を飛べるのに」と思う羽根もありません。
それでもおけらはあまりいい意味で比喩されません。
例えば、こんなに多才なのに「どれもあまり上手くない」と器用貧乏を「おけらの七つ芸」とも言われています。
又、おけらを捕まえて首の根元を持つと手のカマを広げて「助けて!」という滑稽な格好をしますが、これを人間に例え「賭け事で負け、お金が無くなりばんざい、降参」と言う時の所持金ゼロ状態を「おけらになる」といいます。
飲み会でお金がない時「私、おけらだから」も同じで、その人が突然カミングアウトして実は自分が昆虫であったことを告白したわけではありません。
語源は賛否両論ですが、「虫けら」もつまらない虫の存在から命名されたという説もあります。
おけらにはあまりいい印象がないように感じます。
僕は、童謡の「手の片を太陽に」に出てくる「ミミズだって、おけらだって、みんな生きているんだ」の歌詞が気になります。
何故、ミミズとおけらなんでしょうか。
地中に住む暗そうな生物同士だからでしょうか。
「子犬だって、おけらだって」じゃダメですか?
そして「おけらだって」の「だって」ってなんでしょうか。
「だって」は副詞的用法にあたり初期段階でおけらを生物扱いしていません。
英語的用法で言えば「Even if you are a mole cricket」で、直訳すると「例えあなたがおけらだとしても」です。
地中に住むおけらに生存権はもともと存在せず、「こんな奴らだって生きているんだから、がんばって生きていこうぜ」みたいな。
何にしてもおけらが地中で生活するため、暗いという陰のイメージが先行しているように感じられますが、おけらから見れば地上で生きる方が「敵が多く弱肉強食の競争社会」を悲観しているかも知れないのです。
因みにお金がない時「As I have just become a mole cricket I can’t pay anymore.」「私おけらになっちゃたんで、もうこれ以上払えない」は日本で通用しますが、それはおけらに「無一文で支払能力なし」と言う意味があるからです。
ところが外国では「私、ちょうど今、虫になってしまったので、これ以上払えない」という意味になります。
これはこれで、カフカの「変身」を彷彿とさせるかなり高度でシュールな冗句と言えますが、「As I have just become a mole cricket I can’t pay you back anymore」にすると「私たった今、虫になっちゃったの。借金これ以上返せない」と借金の取立て者への言い訳になりそうですが、債務不履行で訴えられた上に精神鑑定まで受けなければならない事になります。

すみません、長くなってしまったので来週は、幼少期にあった僕のおけらにまつわる話をさせていただければと思います。

注釈:カフカの「変身」

フランツ・カフカは、チェコのプラハでドイツ・ユダヤ系商人の息子として1883年に生まれました。
プラハ大学を卒業し労働者災害保険局に勤めますが、結核を患いイヤイヤ勤めたその会社を辞め作家活動をしましたが、その2年後の1924年に病死してしまいました。(41歳)
「変身」は実存主義に基づく彼の最も有名な作品で、僕は不条理を描くカミュと共に好きな作家のひとりです。
あらすじを簡単に書くと、ある日貿易会社に勤めるサラリーマンの彼が出社の朝突然、毒虫に変身してしまうのです。
家族は父母と妹ですが、気持ち悪い彼を幽閉し、唯一の稼ぎ頭を失った家族はそれぞれ働き始めるのです。
ここで彼と家族の関係が逆転し、家族に疎まれていく彼は自ら食べる事を拒み死んでいくという話です。(思いっきり短く書きました。)
このストーリーは彼が自ら変身することを望んだのか、あるいは家族が初めから彼を虫のように見ていたのかなど現在の社会や家族のあり方に精通する所が沢山あります。
特に、昨今の「いじめ」や「ひきこもり」そして「自殺」と現代の隠された問題を虫に変身してしまうという現象で浮き彫りにしています。
虫に変わってしまう不条理か、又「虫になってしまいたい」と言った願望が呼ぶ不条理なのかはわかりませんが、家族によって自殺に追い込まれた彼の死は単なる「虫の死」として家族に扱われ「厄介ものがいなくなった」後に平凡に妹の結婚をあたりまえのように語る家族で終わっていくのです。
僕はこの最後の部分に生きる事への不条理を感じてしまいます。
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  1. 2012/07/20(金) 14:22:23|
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